ポルトガル 



 走行300kmの大移動(3日目) 
 この日はリスボン→ポルトへ移動。ポルトといえばポートワインの産地としても有名な場所で、リスボンから飛行機で45分の場所にあります。その移動途中で観光しながら行きましょう、というのがこの日の行程です。ホテルを9時に出発してまず向かったのは、オビドスという城壁のあるこじんまりとした小さな村。何せ人口はわずか800人! 高校の在校人数よりも少ないよ……。その昔ローマ時代に海からの侵略に備えて砦を構えたのが始まりとされ、その城壁が今も村の周りを囲んでいます。 豆知識としては、オビドスの家は基本的に緑、黄色、白(壁の色)しか使われないこと。この3色はオビドスの旗を構成する色で、昔ここの領主でもあった王妃が好んだ色だとか。
 訪問者をまず迎えてくれるのが、このポルタ・ダ・ヴィラ(→)と呼ばれるメインゲート。藍いところがアズレージョと呼ばれるタイル絵です。もともと他国の文化であったタイル絵は一枚のタイルに一つの絵を描きましたが、どうせならタイルを並べて大きな絵を描こう! ということで生まれたそうです。暑さ対策としても有効らしく、王宮や教会の壁にも採用されています。壁や天井に取り付けるほか、家の外壁にも装飾代わりに使われることも。ここオビドスはアズレージョが特に多く見られる場所で、村中のいたるところで遭遇できます。特にサンタ・マリア教会の中は凄いですよ♪ 四方八方をアズレージョで飾り、その他の飾りは絵画と金細工のみ! ひんやりとしたその空気は他の教会とはまた違った感じがします。
 さて、ここの名物といえばジンジャというお酒です。さくらんぼに似た果実から作られる果実酒で、アルコールは18%以上。瓶の中にその果実が入っているので、何となく梅酒が頭に浮かぶ……。バーでぐい飲みができるとのことでしたが、アルコールが強いと聞いて断念、お土産用に購入しました。もちろん、渡したその場で味見をさせてもらいましたが(笑)。ワインに似た濃厚さで、でもさらさらした感じでもなく。ブランデーで発酵させてるとも聞いたので、それが原因なのかも。ちなみに正式な飲み方はグラッパのように50mlくらいをぐいっといくみたいです(実際にバーで飲んできた人談)。
 次に向かったのはアルコバサのサンタ・マリア修道院。はい、お気づきの通りポルトガルは同じ名前の教会がたっくさんあります。マリア様を祭るという意味があるので名前が同じだろうと気にしない模様(さすが……)。ここでは二つの棺が互いに足元を向け合って納められています。普通は棺上にある人物像が立ち上がったときに聖像(教会正面)を向くようにされているのですが。では、この教会に関する生々しいお話を。
 昔、ペドロ王子(後1世)は政略結婚である国からお姫様をもらいました。納得の上での結婚ですが、彼女に付き従う次女イネスが彼の目を奪います。妻の目を盗んで不義を重ねる二人を見かねて、ペドロ王子の父がイネスを修道院へと移し、二人の間に水を差しました。だが、これでへこたれないのがペドロ王子の凄いところ。なんと監視の目を掻い潜ってイネスとの間に3人の子供を生します。そしてこの間に彼の正妃は一人の子供を産みますが、産後が思わしくなく他界。そこで彼は自分の愛する女性を正妃にしようと考えますが、父王がかの姫の国の圧力を恐れて3人の刺客を雇ってイネスを殺害してしまいます。この数年後父王が他界し、正式にペドロ1世となった彼。まずはイネスの墓を掘り起こし、彼女の服を王族用のそれに着替えさせると、王妃の椅子に座らせました。そして教会と諸侯に「彼女が自分の唯一の妃である」ことを認めさせ、イネスを殺害した3人の刺客の首を刎ねたのでした。
 ……とまぁここまでは純愛にも思えるおとぎ話のようでしょ? 生々しいのはこれからですよ。
 諸侯に宣言させたペドロ1世は彼らを跪かせただけでは気がすみません。そこで次のように告げました。「わが妃イネスを正妃と認めるものは、きちんと彼女に忠誠を誓え」。きちんと忠誠を誓うこと、それは騎士が女性に挨拶をする時のように、彼女の手の甲に接吻をすることを示します。でね、思い出してみてください。イネスが魂を無くしてから数年後は経っています。当然肉体は……なわけで。でも、ここで拒むことはイネスを認めないと王に宣言するようなもの。拒めば死が彼らを待っています。彼らは覚悟を決め、きちんと挨拶をしたそうです。
 ちなみにかのペドロ1世はこれといった功績もなく、地味〜な治世を送ったとか。
 次のサンタ・マリア教会はパターリャという地域。ここもかつては戦いの場所となったところで、ジョアン1世が勝利を神に感謝して教会を建てました。この教会はとにかく大きい!! ポルトガル内で見てきた中で一番大きいかも。そして教会の側にはこの地を守るかのように馬上から見つめる人物像が。「これ、この教会を建てた王様?」「いえ、彼に仕えた騎士だそうです」 ……なぜ、騎士の像がここにある(笑)? この教会の謎はこれだけではありません。教会といえば出入り口が同じはず。なのに、ここは裏側へと通じる扉が開放されています。そして向かうは空の覗く空間へ(→)。もちろん、教会の一部なので、王族の棺がそこにもあります。でも、青空教室って、どうよ? その理由はジョアン1世が建て終わる前に崩御したのが原因とか。なんでも、その後告いだ王弟が遺言に従って建造を続けたものの途中で違う教会に興味を持ち、結果、キリの良いところで止めてしまったそうです(笑)。そんなんでいいのか、王様……。
 なお、この写真ではわかりませんが、この場所の柱にはカタツムリが必ず彫られています。ガイドさんに聞いたら「何でもゆっくりなポルトガル人だから、この教会が出来上がるのも遅く、それを揶揄しているんじゃないかといわれています」だって。―――ユーモアがあるというべきなのか、これは?
 次いで向かったのはファティマにあるバジリカと呼ばれる大寺院。
 さて、みなさん、ファティマの奇跡という言葉をご存知ですか? これは第一次世界大戦終了間際、ファティマという地に聖母マリアが3人の子供の前に姿をあらわし、このファティマの地に聖母マリアをたたえる寺院を作ることを願い、彼らに3つの予言をしたというものです。このうちの2つの予言とは、終戦(第一次世界大戦)、死への旅(この3人のうち2人が数年後に死亡)とされ、そして残る1つは残された一人と故ローマ法王 パウロ2世の2人だけの秘密と言われています。そう、最後の1人はつい最近まで生きていて、亡くなったのは今年の春でした。先に黄泉路へと旅立った2人もここに埋葬され、残る1人もそろそろこの大寺院に眠る日がくるはずです。


∇ のどかな長距離の旅(4日目) ∇
 ポルトのホテルは何と☆☆☆☆☆! 朝食も豪華で、きちんとしたビュッフェ・スタイルです。さて、なぜ今までリスボンのホテルの朝食について触れなかったか。―――最悪だったのですよ、今まで体験したことないくらい。フランスのときに「ここ、いただけない……」と書きましたが、あれが上等に見えるほど(笑)。まず席を確保する椅子取りゲームから始まり、パン2種類、スクランブルエッグもどき2種類、コーンフレークと果物のみ。運がよければハムとチーズが食べられるかもね、という「ちょっと待てぃ!」と物申したくなるような凄まじさです。いや〜今回の旅で学びました。ホテルのランクは重要です(笑)。
 さて、みなさま、左の写真をご覧ください。どこかで見たような気がしませんか? 実はこのポルトという町は『魔女の宅急便』(@宮崎駿)の舞台のモデル地域でもあります。あの話の舞台はもちろん架空の場所なので、ここだけが舞台というわけではありませんが(オランダ説もあるし)。すっごく細かい話をすると、キキが育った町を離れ空を飛んでいたとき、掃除夫に「この町に、魔女っていますか?」と聞くシーンがありますよね? そのおじさんが掃除してた塔のモデルがこの写真にある塔ではないか、と言われているそうです。
 この日もホテルを9時ごろ出発し、ポルトの町へ(→)。ここは港町としても発達した場所で、大航海時代に数多の船がここから海へと出て行った場所とも言われています。町の中心にドウロ川が流れ、未だに船ありきの生活が送られています。ワイナリー付近になると、広告代わりにワイン樽を積んだ船が浮いていたりします。主要な運搬方法はトラックへと変わっているので、本当に浮いているだけみたいです。
 さて、まずはアズレージョを……ってこればかりですね(笑)。でも、このサン・ベント駅のものは壮大です(→)。元々は教会として使われていた建物ですが、現在は改築されて特急の停まる主要駅へ。まず一歩入った場所の四方を覆う大きなアズレージョに目を奪われ、次いで駅の広さにびっくり。……ああ、確かに駅として作られた建物じゃないね。だってチケットなくてもホームに入れちゃうもん(笑)。どうやら地方の駅は改札がなく、乗るときに乗務員がチェックするというのが多い模様。それだけ乗る人が少ないという話なのか……。
 駅を後にして教会へ。こちらで初めて司祭様とお目にかかりました。といっても、一方的なものですが。どこかへ移動するらしく、白バイの護衛つき。おお、さすが守られるべき人なのね……って、やっぱりお車は○ンツですか。あれ、しかも運転してる人は別だよ! と騒いでいた私たちは不届き者でしょう。
 さて、ここからが今日のメイン。GRAHAMSというワイナリーの工房見学です♪ といっても、日本のワイナリーとどこが違うのかと聞かれても困ってしまいますが。
 ポルトガルワインは”ポートワイン”として日本に輸入されています。音は聞いたことあるけど……という代物ですが、それもそのはず、あまり輸出されていません。なぜなら、出来上がったものの7割は自分たちで飲んでしまうお国だからです(笑)。これといった輸出品を持たないポルトガルの唯一の外貨入手方法だと思うんだけどなぁ。そんなわけで、ビンテージと呼ばれるワインは滅多に日本ではお目にかかれません。出合ったときは迷わず飲んでみてくださいね。その価値はありますよ! 高いけど。
 さて、ポルトガルワインはおおまかに分けてテーブルワイン(食事中)とデザートワイン(食前酒、食後種、ナイトキャップ用)の2種類があります。作り方は途中まで一緒です。発酵が進むほど辛口になるので、デザートワインはブランデーで発酵を意図的に止められてしまいます。なので、ブランデー+抜け切らなかったアルコール分があるために度数が高くなるそうです。あと、「みどりの手」と呼ばれるワインもありますが、それは発酵を2-3年で完全に止めてしまった若いワインのことです。これはこれでおいしいですよ。普段飲みには丁度いい感じ。
 お姉さんの説明を聞きながら試飲をさせてもらいました。しかも赤2、白1の3種類! デザートワインはというと、色は濃厚な紅、グラスの中での揺れ方もテーブルワインとは違います。どっしりとした重みと甘みが口の中で転がり、飲み込むのがもったいないくらい。男の人は甘いの苦手かな〜と思って周りを見てみると、気に入ったと言う人が多数。中にはお土産用に持ち込みギリギリの本数(1人:3本まで)まで買う人もいました。トータルすると……いや、考えるのはやめよう、うん。ちなみに私が買ったのは50ml×5本のお試し用パック。のん兵衛の多い部署用のお土産となりました(笑)。



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