それは花嵐の中で

 

 

 桜の蕾が花へと姿を変えた、ある春麗らかな日。

 いい天気だねと突如聞こえた言葉に、側にいた三人は嫌な予感を覚えた。だが、その心境を察することなくそれは続けられる。

「青い空、白い雲、陽射しも痛くなく……まさしく花見日和だな」

 そう言いだしたのは、この学園内で一教師を遥かに凌いだ権力者である生徒会長殿。役員の誰もが新入生を迎えるに当たっての雑務をこなす状況下で、彼だけが優雅な空気を醸し出していた。

「どこにそんな暇があるんだ!?」というのはここにいる誰が思ったことだろう。なにせ、本日は入学式当日。イベントは全て生徒会が仕切るという伝統に従い、本日の準備も進行役も生徒会が担っているのだ。

 すでに入学式の受付は始まっている時刻だし、そろそろ式場に向かわなくてはならない。何よりも新二年生二人を始めとするお手伝い要員がてんてこ舞いになっているだろうことを心配して、気もそぞろな状態なのだ。

「そんなに花が見たいんなら、窓の外でも眺めてろ」

「やだな、和意。僕は花見がしたいんであって、花が見たいわけじゃないんだよ。ま、ここで昶くんがいれば華になるんだけどね」

「………………」

 昶が生徒会室に顔を出すのは斎賀の“花見”の桜になるためではない。しかも、ここにいないのは誰のせいなんだ、と心の中で反論をしながらも、和意は平静な表情を崩さなかった。

「―――それで、花見がどうしたって?」

「ほら、丁度満開じゃないか。明日は週末だけれど雨だというから、散ってしまうかもしれないだろう?みんなの親睦を深めるいい機会だし、花見をしようよ」

「おまえがしたい、の間違いだろう」

「細かいことは気にしない。うん、そうだな。善は急げというし、今日の式の後に打ち上げとしてやろう」

「今日っておまえなぁ……」

「何? 昶くんとのデートについていって欲しい?」

「………………わかった」

「最初っから頷いておけばいいのに。さて、と。金児」

「は、はいっ!?

 無関係を装って二人の会話を聞いていた金児は、突然の指名に思わず手の動きを止めた。途端にばらばらと机の上から書類が落ちたのに、高橋が批難の声をあげる。それにようやく事態を把握し、慌てて落ちた書類を拾い始めた。

「そういうわけだから、人数の把握と場所の確保、よろしく」

 追い討ちをかける注文に、金児は今度こそ動きを止めた。

 人数の確保、これは斎賀が気に入った状態で過ごせればいいのだから、大勢を集める必要はない。ただ、渋った人間に対して説得するのが大変なだけだ。

 それよりも問題なのは場所である。

 校内の桜は満開でも、その下でというのは斎賀のお気に召さないだろう。土手で酔っ払いに混じるという選択肢は端から除外されているだろうし、だとすれば、どこか桜のある店を探さなくてはならない。

 せめて一月前に思いついてくれれば、まだ選択の余地もあったのに。

「え、と、それは決定…………ですよね」

 床に膝をついた状態で問いかけ、そして無言の圧力に答えを見つける。ここまで斎賀が押してくるのなら、こちらとしては頷くしかない。和意の視線も恐いが、金児にとっては生徒会面子でいる以上斎賀の意見が最優先なのだ。

 それにしても、場所はどう確保すればいいものか。近くの土手で咲く桜の下では多くの酔っ払いが屯しているだろうし、桜のある有名店は特に予約で埋まっている。

 どうしようかと途方にくれかけた金児に救いの手を差し伸べたのは、一番近くにいた高橋だった。

「だったら、うちの別宅使う? 隣りの県だしちょっと距離があるけれど、明日は休みだから安心して騒いでいいよ。移動も車呼べば構わないだろ」

 枝垂桜で綺麗だよ。そう言って笑う彼に斎賀が不思議そうな顔をする。別宅とは言っても、彼の家人が頻繁に出入りしている場所だ。桜があるというのなら、尚更誰かがこの時期を楽しんでいるのではないか。

 斎賀の疑問は当然金児には届かず、彼は素直に喜びの声をあげた。

「いいんですか?」

「構わないよ。だからちゃっちゃか仕事を進めてて」

 頷いてもらえた金児は、大きな返事とともに高橋の抱えていた書類を引き受ける。小躍りしそうな勢いで先に式場へと向かうその後姿を見ながら、和意と雑賀は視線を交わした。

 要するに、斎賀の注文に頭を悩ませるあまり金児が失敗しかねないと判断したのだろう。場所を提供してやるからその分余計なことを考えずに働けと、高橋は金児の背中をどかりと蹴りつけたのだ。相変わらずの手際に二人は苦笑するしかない。

 完全に金児の姿が見えなくなってから、やはり高橋家の別宅を知っている和意が問う。

「今、空いてるのか?」

「うん。今年の桜の宴をするのは別宅じゃないからね」

 高橋の家系で行われる桜の宴は、この時期の日曜日に本宅と別宅のどちらかで行われる。今年は本宅が会場となるため、別宅に人が集まる心配はない。おまけに本宅ほどの人の出入りも激しくないため、高校生が大騒ぎをするにはもってこいの環境だ。

 そこで高橋は思い出したように二人を振り返る。

「きっとおじい様がいらっしゃると思うんだ。二人のことを気に入ってるからきちんとお相手してあげてよね」

 高橋の祖父といえば、国会議員を経験した後に若くして退職、そして今は息子とともに起こした企業の会長に納まっている豪傑だ。未だに議員時代の繋がりを保ち、永田町にその声は届くとも噂されている。

 和意と斎賀は何故か一目で彼に気に入られ、以来何かと構ってもらっている状況にある。彼という後ろ盾があるか否かで将来的な環境も変わってくるため、友人の祖父とは言えどもおいそれと近づける相手ではない。

 もっとも高橋にとっては自分を可愛がってくれる祖父なのだが。

 絶対条件を最後に突きつけられ、指名された二人は唖然と高橋を見つめた。滅多にないその表情を堪能した彼は、「車の手配もきちんとしておいてね」と付け足して先に歩いていく。

 その背後で「おまえが責任取れよ」と、和意が斎賀に迫ったのは言うまでもない。

 

 

 

 一方、入学式を行う講堂付近では、小さな人だかりができていた。

 式の始まる十五分前とあって、新入生とその保護者が雪崩のように押しかけてくる。それを捌くのは、昶と聡里、そして以前委員会等で生徒会と関わったことがあるという同じく新二年生の細川郁也の三人だ。

 他にも運動部等が強制参加しているが、彼らに振られた仕事はこの人込みを流すことと会場内の整備のみである。三人では足りないと言えば、「受付は顔が良くないと」と納得しかねる言葉で却下されてしまった。

 笑顔で受け付け、名簿でチェックしたあとで胸に飾る花を手渡す。きちんと着けてあげるんだよ、と言われてはいたが、そんなことは知ったものか。

「……あとで覚えてろよ」

 今朝方の会話を思い出し、ぽつりと昶が呟く。それを耳にした二人は苦笑を浮かべるしかない。

 それから十分ほど格闘し、ようやく人の流れが完全に切れる。それを狙っていたかのように、運動部員の一人が手伝いを求めてやってきた。一番近くにいたという理由だけで細川が引っ張られ、昶と聡里の二人だけが残されてしまう。

「あーあ、連れて行かれちゃったよ」

「ま、郁実なら大丈夫だろ。それよりも、やれることはやっておかないと」

 あっさりと切り替えた聡里は、昶の名簿と自分のそれを照らし合わせ始めた。来ている人数をチェックすれば、自ずと残すところ何人かが知れる。

 もう新入生は来ないだろうか。校門のほうへと視線をむけていると、ふいに聡里が昶の名を呼んだ。

「春休み、本当に一日も和意先輩と会わなかったの?」

「な、なんだよ、急に!」

 突然の直球に昶はぎくりと身体を強張らせる。実は今朝顔をあわせた時から、彼がそれを訊きたがっていただろうことも予測できていた。

 答え難いために敢えて忙しさを理由に見ぬ振りをしていたのだが、それももう限界らしい。

 ここで誤魔化したところですぐにボロが出るだろう。後々のことを考えれば、今ここで素直になっておくほうが得策だ。

「……き、昨日は会ったよ」

「昨日、ねぇ。昶が帰ってきたのだって昨日じゃなかった?」

 そう、この春休みはイギリスでほぼ過ごした。終了式の終わった次の日から昨日成田に着くまではずっと英語圏にいたことになる。その間、もちろん和意とは一度も会えないまま。電話をしようにも時差の都合で叶わなかったでのある。

 航空券を予約したときには恋人ができるとは予想しておらず、あまりにも直前過ぎて日程を変えることもできなかった。

 彼なりに春休みの計画を立てようとしていたらしい。そのことを申し訳なく思っていた昶は、帰宅して真っ先にしたのが和意への電話だった。

 一分でもいいから会えないかと言われてしまえば、それを断る術は持っていない。結局家の近くにある公園で待ち合わせをすることになった。

「でも、そんなに長い時間は会ってないし……」

「短くても会いたかったんだ?」

「さ、聡里っ!」

 本当に正直者だね。聡里の瞳に浮かんだ揶揄に気づき、昶は顔を真っ赤にする。抗議のために手を振り上げると、聡里は笑ってそれをかわした。

「あーあ、本当に可愛いんだから。和意先輩にはもったいないよ」

「だから……もう、なんでそっちに話がいくんだよ!」

 完全に頭から今の状況が吹き飛んでしまった昶は、くすくすと笑いを堪えない聡里に迫る。いつものじゃれあいに発展し、お互いに気を取られていた二人は、近づいてきた金児に気づかなかった。

「おまえら、仕事しろよな。もうすぐ式が始まるんだぞ」

「……はーい」

 とりあえずの返事をした二人だが、金児の持つ書類の多さに首を傾げる。

「それ、何?」

「来週からのオリエンテーションの流れ。とりあえず各クラスの人数分に山を作って、適当に渡すんだと」

「それって生徒会が作ってたんだね。てっきり学年主任か誰かの担当だと思ってたけど」

「持ち上がりも多いけれど、学校になれるための下準備ってところだしな。一応部活紹介やなんかもするし。そうすると生徒会の管轄になってくるらしい―――っと、そうだ。おまえら今日の夜暇だよな?」

「……何、その突然な話題転換」

「暇だよな?」

 お願いだから頷いてくれ。有無を言わせない雰囲気に、昶は思わず頷きかけた。それを聡里が腕を引くことで思いとどまらせる。

「金児、今日の夜何があるの?」

「や、だから……」

「どうせ会長がなんか言い出したんだろ? ほら、後出ししようなんて思わないでさっさと話した方がいいってば。」

 満面の笑みを浮かべながらも、瞳と態度はまったく逆の感情を示している。

 誰かさんに似てるきたかも……。

 口に出せば矛先がこちらに向くだろうことを思い浮かべていると、長閑な声が二人の空気を一掃してしまった。

「君たち、そんなところで何をやってるの」

「か、会長!」

 本家本元の登場に、金児は顔を輝かせた。その背後には和意や高橋も居り、孤立無援状態が一気に変化する。

 それに対して聡里はタイミングが悪いと眉を顰めた。金児の誘いにこの人物が一枚以上噛んでるのがわかっていたからこそ、いない間に問い詰めてしまいたかったのに。

 先ほどとは異なる空気が漂い始める。どうやって間に入ろうかと迷う昶の側に、和意が静かに近寄ってきた。

「……で、何をもめてるんだ?」

「揉めてるわけじゃないよ。さっき金児から今日の夜が暇かって聞かれたんだけど、その中味を話さないから聡里が聞きだそうとしていただけ。先輩、知ってる?」

「ああ、それな……斎賀が今日の夜に花見をやりたいんだと」

「それ言い出したの今日だよね? そっか、それで金児も鬼気迫ってたんだ。どこでやるの?」

「高橋家の別宅。ただ、隣りの県にあるから泊まりになるな。おまえ、平気か?」

「ん? 平気だけど……いいの?」

 今日の式後にどこかへ行こうと約束をしていたことを言外に匂わせる。すると、和意は諦めの笑みを浮かべ、昶の頭を軽く叩いた。

「あいつの誘いを断ると後が恐いからな。何を言われるかわかったもんじゃないし。同じ場所にいられるだけでも良しとするさ」

 覗きこむような距離で見つめられ、昶の心臓がどくんと跳ね上がる。

 昨日は夜だったし、こんな明るいところで和意と接するのは本当に久しぶりだ。ようやく慣れたと思っていた距離を忘れかけていた昶は、間近にある和意の整った顔から不自然な勢いで視線を反らした。

 この脈絡のない行為に目を瞠った和意だが、俯いた昶の耳が赤いのに気づいて思わず笑みを零してしまう。

 上機嫌なそれに昶は居たたまれなくなる。和意の側からとりあえず離れようと身体ごと動かしたその時、こちらに向かってくる人影に気がついた。綺麗に平走する二人分のそれに、思わず声をあげる。

「――――あれ?」

 もしかして新入生だろうか。

 腕時計を見れば開始時刻まであと数分というところ。どうやら駆け込みで定時には間に合わせようというつもりらしい。

 そうなると、ここで屯している生徒会のメンバーも指定の位置に移動しなければならない時間のはずだ。

 視界の端で聡里が動くのに気づき、受付は彼に任せることにして和意を振り返る。

「先輩、まだ平気なの?」

 同じように遠くから走ってくる姿を見つめていた彼は、あっさりと頷いた。

「あいつらの受付が済んだら入るよ。式の間に来てない人数の把握をしておいてくれるか?」

「クラスごとに出したほうがいいよね?」

「そうだな、できればそれぞれ別の紙に書いてくれれば各クラスの担任に渡せるから――――」

「あ、昶先輩っ!?

 驚きを含んだ声が、和意のそれにかぶさった。だが、一番驚いたのは呼ばれた本人である。顔を向けると同時に抱きつかれ、構えていなかった躰がぐらつく。後ろに回った和意が支えなければ、間違いなく背中から倒れこんでしまっただろう。

「ご、ごめん、先輩っ」

「……いいから、それ、なんとかしろ」

 機嫌の良かったのが嘘のように、和意の声は硬い。促され、自分を捕縛する腕の持ち主を確認した昶は驚愕の声をあげた。

「ひ、桧原!?

「先輩、お久しぶりですっ」

「あ、ああ、そうだな……って違う! 苦しいから離れろって!」

「そんな、冷たいじゃないですかぁ。一年ぶりの再会なんですよ?」

 端から見れば、大型犬がじゃれ付いているように見えるかもしれない。だが、全体重をかけられ、昶の筋肉が悲鳴を挙げかけている。おまけに背後で支える和意の纏う空気が冷たくなっているのが恐い。

 なんとか距離をとろうと攻防していると、ふいに桧原のほうから離れていった。ほっとして顔を上げた昶は、そこに見知った顔をもう一つ見つけた。

「……神崎」

「お久しぶりです、昶先輩」

 にっこり笑うその手は桧原の後ろ襟を抓んでおり、彼が引っ張ったのだと知る。

 桧原よりも背は低いのに、逃がさないように止めておくにはよほどの力が要るはずだ。普通ならそれに驚くのだろうが、昶にとっては見慣れた光景でしかない。

 思わず笑みを浮かべてしまった昶だが、周囲の問い掛けてくる視線に気づいて表情を改めた。

「ええと、お騒がせいたしました」

「昶くんの知り合いのようだね。紹介してもらえるかな?」

 ようやく体勢を整えた昶は、一度和意に視線を向けてから斎賀へと向き直る。

「背の高いほうが桧原勇一、それを抑えてるのが神埼正典です」

 初めまして、と頭を下げる二人に斎賀は上級生らしい笑みで応えた。

「昶くんの中学時代の後輩? だね。僕は斎賀といって、この学校の生徒会長をしています。ここにいる人間全員が生徒会の関係者。一人一人紹介したいんだけれど、そろそろ式が始まってしまうから後日にしようか」

 斎賀のわざとらしい視線につられて見れば、入り口からこちらを見つめる人物がいる。

「……うわ、誠ちゃん怒ってるよ」

 会場整備を担当している恋人の姿を見とめ、聡里は小さく呟いた。早く来いと急かすことなく無言でいられるほうが、気づいたときに圧力を何倍も感じるものである。

 さすが運動部部長、と昶は妙なところで感心していると、高橋が受付から持ってきた胸飾りをそれぞれ新入生の胸に飾ってやった。

「さあ、僕たちより先に入っておいたほうが後々楽だと思うよ」

「はい、そうします」

 斎賀の言葉に何かを感じたのか、神崎のほうがきちんと受け応えた。桧原はというと肯いた後で昶に向き直り、その手を握り締めた。

「先輩、あとでまた会いましょうね」

 今生の別れのような態度に昶は思わず苦笑を浮かべてしまう。

「はいはい。どうせ校内で会うんだから大人しく行けよ」

「ほら行くぞ、桧原」

 やはり強制的に主導権を握った神埼に促され、桧原はしぶしぶ昶の手を離す。だがなかなか動こうとしない桧原に焦れた神崎が引き摺っても、彼は懲りることをしなかった。連れて行かれるまま空いた手をぶんぶんと振るその仕草は子供のようである。

 人騒がせな二人を見送った一行は、それぞれ思いを篭めた息を吐く。

 その中で最初に楽しげな声音を出したのは斎賀だった。

「うーん、和意にライバル出現」

「結構パワフルだったねぇ」

「恐いもの知らずというかなんというか……」

「……おまえら」

「おや、拗ねちゃって。正直にならないとあとで困ったことになるかもよ?」

「余計なお世話だ」

 珍しく苛立ちを隠さない和意の態度に肩を竦めると、斎賀はほっと一息ついていた昶に向き直った。

「じゃ、昶くん。あとはよろしく」

「へ? あ、あとって……?」

「この男が仏頂面してたら新入生が恐がっちゃうからさ。式には多少遅れてもいいから何とかしてきて」

「あ、あの……」

「受付の片付けはとりあえず僕と郁実でやっておくね。終わったら戻ってきてよ」

 聡里に言われてようやく何を示されたのかに気づき、昶は慌てた。だが、抗議する間もなく話はどんどん進んでいく。

「金児を手伝いに残すから、使ってくれていいよ」

「郁実が運動部に連れて行かれちゃったから、それなら力仕事任せようかな。受付とか片付けなくちゃいけないんでしょう?」

「はいはい、やらせていただきますよ」

 口を挟むこともできずに呆然とするその二の腕に和意の指がかかる。そのままぐいっと力強く引き寄せられ、昶は頬をネクタイ越しの胸元にぶつけた。顔を上げようとすれば触れる指に力を篭められ、困惑を抱いてしまう。

「せ……先輩?」

「和意、十分だぞ」

「それで済んだらな」

 受け答えする和意の声は平淡で、それが昶の不安を倍増させる。

「ちょ、ちょっと先輩ってば!」

 前触れもなく腕を引っ張られ、おまけに早足で前を向いたままの和意を呼び止めようとした。だが、和意の足は止まることなく講堂裏へと向かう。

 助けを求めて背後を振り返れば、生徒会面子と聡里がこちらに向かって手を振っているのが見えた。

 

 


 はい、久しぶりの「恋愛」コンビです。一応“私立青南高校シリーズ”という名前があるのに、和意×昶しか未だに話を書いていませんね()。誠吾×聡里のカップルもいるし、密かに計画している人たちもいるんですが、なかなか文章になってくれません。

 とりあえず春=花見、新学期という法則に当てはめてみましたが……無謀だったかな。それぞれネタが散りばめてありますので、興味のある方は拾ってみてくださいね。





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